きょうこの頃



2021年8月7日(土)

 ブログ参照
 http://kohkaz.cocolog-nifty.com/monoyomi/2021/07/post-42773d.html

anticipation
attribution
004p

ウサデン 032p.

EMP攻撃 033p.
《electromagnetic pulse》強力なパルス状の電磁波。雷や大規模な太陽フレアのほか、高高度における核爆発によって生じる。

UKUSA 115p



 インターネットはl960年代から開発が始められ、1990年代から一般に普及するようになったが、インターネットとサイバースペースは同じものとしてはとらえられない。インターネットは定義上、ネットワークのネットワークであり、各種のコンピュータ・ネットワークが相互に接続されたものである。しかし、インターネットには接続されていないものの、同様の技術を使ったサイバーシステムがその外に広がってきている。例えば、道路や航空路などの交通管制を担うシステムにも同様のコンピュータやネットワークが使われているが、通常はインターネットには接続されない閉鎖システムになっている。原子力発電所などの重要インフラストラクチャもそうである。社会機能の多くがそうしたサイバーシステムに依存するようになっていることから、サイバースペースの重要性は高まってきた。
 サイバースペースのガバナンスは、1990年代までは民間の技術者たちによって担われていた。技術標準を検討するIETF(lnternet Enginee・ing TaskF・rce)、インターネットの住所機能を担うICANN(lnternet C・rp・rati・n石・・Assigned Names and Numbers)などの多くの非営利組織が自律・分散・協調的なガバナンスに参加していた。しかし、インターネットが社会的な重要性を高める2000年頃から、各国政府が介入してくるようになった。
 特に、近年は、サイバースペースを介し、各種の犯罪、スパイ活動、攻撃が行われるようになり、そのガバナンスが重要性を増してきている。2007年のエストニアに対する分散型サービス拒否(DDoS)攻撃の発生は、国家間の争いにサイバー的な手法が使われることを示した先例になった。2010年にはイランの核施設に対しサイバー攻撃が行われ、サイバー的な手法が物理的な施設に影響を及ぼすことができることを示した。2014年のソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント社に対するサイバー攻撃は北朝鮮が行ったと断定されており、一国家が一企業を狙い撃ちすることも示された。さらに、2016年の米国大統領選挙ではロシアがノ・ッキングやフェイク・ニュースで介入し、国際政治上の問題になった。
 既存の研究では、グローバル・ガバナンスの視点からサイバースペースを捉えるものが多かった。しかし、本章では、サイバー攻撃に注目し、そのアンティシペーション(anticlpation:予期)とアトリビューション(attribution:特定)という視点から考えてみたい。その過程は、2010年をおおよその境目として、デジタル・デバイドが議論された時代と安全保障上の懸念が高まる時代としてとらえることができる。そして、近年のサイバーセキュリティ問題の悪化に対してアンティシペーションとアトリビューションが別の抑止の形につながる可能性について検討したい。
(3〜4頁)

サイバースペースと電磁波

 2018年12月、日本で閣議決定された防衛計画の大綱では、「多次元統合防衛力」がキーワードになった。ここでいう多次元の「次元」とは、実質的には作戦領域のことを指しており、従来の陸、海、空に加えて、第四の作戦領域としての宇宙、第五としてのサイバースペースが加えられた。さらに日本独自の取り組みとして、第六の電磁波も加えられ、宇宙、サイバー、電磁波の頭文字を並べて「ウサデン」と呼ばれている。
 しかし、サイバースペースと電磁波が他の領域と違うのは、それらが人工的な領域だという点である。繰り返し述べているように、サイバースペースは我々が手にするパソコンやスマホといった通信端末、それらがっながる通信回線、そしてその向こう側にある記憶端末などの集合体に他ならない。電磁波はそうしたサイバーシステムを制御したりつないだりするために使われている。我々はひとつのサイバースペースを共有しているような錯覚を抱いているが、それぞれに見えている情報はバラバラであり、サイバースペースにっながる端末も日々入れ替わっている。
 もうひとつ、サイバースペースと電磁波が他と異なるのは、それらが陸、海、空、宇宙の各領域をつなぐ存在だということである。複数の領域を統合した作戦を展開するには、何らかの形で、それらに関わる人たちの意思疎通を可能にし、機械同士が自動的に通信できるようにしなければならない。それを担うのがサイバーシステムである(それは必ずしもオープンなインターネットではない)。陸、海、空、宇宙、それぞれの領域における部隊同士の連携に何らかのサイバーシステムが必要であるように、領域を横断する連携にもそれらは必要になる。
 ところが、インターネットを越えてサイバースペースが拡大し、さまざまなシステムにおいて重要性を増すにつれ、それが攻撃や工作活動の対象となりはじめた。システムを破壊したり、機能不全に陥らせたりする、あるいは、その脆弱性を突いて密かに情報を抜き出したり、不正なデータを紛れ込ませたりするといった行為が行われるようになった。これらは広い意味でのサイバー攻撃と呼べる。
 また、サイバーシステムの多くは電磁波を活用しており、EMP攻撃を受けると、まったく使い物にならなくなる。EMP攻撃を人為的に起こすことは難しく、今のところほとんど例がないが、大規模に行われれぼ、サイバーシステムが機能不全に陥り、ハイテクに依存した現代の兵器は使えなくなり、艦船や航空機は自分の位置を見失い、自軍と敵軍の区別すらつかなくなる恐れがある。
(32-33p.)



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