きょうこの頃



2014年11月26日(水)

 なにがきっかけで読み始めたのか忘れたが(きっかけがあったのだ)、大下英治『逆襲弁護士 河合弘之』読了。

 ブログ参照

 河合弘之弁護士のホームページ : http://lawyer-kawai.com/


 小林茂は昭和二年(一九二七)四月二十一日、東京に生まれた。東京府立実科工業学校(のちの東京都立墨田工業高等学校)を卒業後、初めは家業の木工家具製造・販売に従事したものの、昭和三十二年に秀和を設立して独立した。
 東京都心を中心に多くの賃貸ビルを建設した。また「秀和レジデンス」の商標でのマンション販売やオフィスビル事業で、業績を伸ばした。
 秀和レジデンスは、分譲マンション黎明期の東京を代表するマンションシリーズの一つとなった。多くの物件は、ソニービルなどでも知られる建築家、芦原義信の設計によるもので、共通のデザインコンセプトで建築されている。外観は南欧風の青い瓦屋根とうろこの白い塗り壁、黒い鉄製柵を配したバルコニーなどを特徴とする。
「秀和レジデンス」シリーズは全部で三〇〇棟以上におよんだ。
 秀和は昭和五十七年、東京都港区芝に地上一四階建ての大型オフィスビル、「芝パークビル」を建設した。延べ床面積が一〇・三万平米で、全長一四〇メートル、奥行き五〇メートルの威容から、「軍艦ビル」と呼ぼれるようになった。このビルには、ダイエーが東京本社を設置していた。
 一九八○年代後半になると、秀和は日本国外における投資にも本格的に進出。創業社長の息子である小林孝二が社長をつとめるロサンゼルスの現地法人を拠点として、カリフォルニア州などに多数の不動産を取得した。
 昭和六十三年(一九八八)、日本人が一位から三位までを独占した世界の富豪ランキングで、小林茂は、西武鉄道グループの堤義明、森ビルの森泰吉郎に次いで世界第三位にランクされている。
116頁 第3章

 いまも「河合さん、それは刑法に触れないか」「大丈夫か」と言う小林の声が残っている。
 刑事事件化することがいかに恐ろしいか。小林は河合に何度も話して聞かせた。河合が一時顧問弁護士をしていた光進の小谷光浩から、ロッキード事件で逮捕された田中角栄、佐川急便事件がらみで逮捕された金丸信のような政治家にいたるまで、逮捕者が出るたびにこうつぶやいた。
「バカだな、あいつら。刑事事件を起こして。刑事事件をやると、死ぬんだよ」
 その言葉を聞くたびに、河合は思った。
合経験しているわけでもないのによくわかるな。それにしても、刑事事件は本当に人を殺してしまうものなのか。単に法廷で鬪えばいいというものでもないんだろうな〉
 小林と接していると、河合も教えられることがたびたびあった。
 小林の言い分には、たしかに一理あった。刑事事件の被告人になると、ほどなく死にいたる例が多い。■田中や金丸もそうだった。田中と同じロッキード事件で逮捕された国際興業の小佐野賢治や、背任容疑で遠捕された不動産会社イ・アイ・イインターナショナルの高橋治則にも当てはまる。平和相互銀行事件の伊坂もそうだ。
 刑事事件は、その人の精神と肉体にとてつもない重圧をかけるのだ。
 小林茂は、バブル経済に踊った経営者のなかでも有数の資産家であった。バブル崩壊後、不動産価格の下落で呻吟している企業群を、その頭文字を取って、「AIDS」と呼んだことがあった。麻布建物、イトマン、第一不動産、そして秀和である。
 だが、小林は、塀の中に落ちたことが一度もないだけでなく、捜査を受けた経験も皆無だ。一生を無事に終えることができた。

120頁 第3章

 一方、イトマンの河村社長は、顧問弁護士の河合との蜜月をばっさり切り捨てて以来、ますます狂っていくことになる。経営コンサルタントの伊藤寿永光や、元不動産管理会社社長の許永中との関係を深めていくことによって、イトマンは奈落の底へ落ちていった。
 許永中は、「日本経済界のフィクサー」といわれた在日韓国人である。昭和二十二年(一九四七)二月二十四日、大阪市大淀区中津に生まれる。
 戦後最大のフィクサーの一人といわれた大谷貴義にボディーガード兼運転手として仕え、フィクサー業の修行をした。昭和五十年に休眠会社だった大淀建設を買収し、社長に就任した。その後、暴力団山口組若頭の宅見勝などとも関係を結ぶ。
 平成三年(一九九一)七月二十三日、大阪地方検察庁特別捜査部は、特別背任の疑いで伊藤寿永光・許永中・河村良彦を含む六人の被疑者を逮捕し、その後起訴した。いわゆる「イトマン事件」であり、戦後最大の不正経理事件といわれている。彼らは有罪、実刑となった。伊藤や許は、イトマンに対し、地上げ屋の経営やゴルフ場開発に多額の資金を投人させた。土地、株、高級絵画やゴルフ場開発などを通じて四〇〇〇億円の金が地下金脈を動き、二五〇〇億円の金が消えた戦後最大の乱脈経営事件である。
 なお、伊藤寿永光の取締役就任に反対する発言をし、河村の逆鱗に触れてから、河合は一度も河村と話をすることはなかった。そのため、河合は、一切この事件に関わることもなく、深入りすることもなかった。本当に運がよかった。
 河村は出獄後、精神に変調をきたしたといわれている。横山ノックの大阪府知事選二選目に「ノックよ
193頁 第4章

 じつは、それらの人たちの責任を追及する方法が、原則、民事的にはないのである。
 原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)の第三条と第四条には、こう書かれてある。
《第三条 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運 転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地 変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
 第四条 前条の場合においては、同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の 者は、その損害を賠償する責めに任じない》(傍線は筆者)
 原賠法では、原子力事業者の東電のみに賠償責任があるとされ、国や個人が責任を負うことがないと、はっきり示している。
「原子力損害については電力事業者という会社のみが責任を負う」という「責任集中」という原則が厳然と存在するのだ。その結果、原子炉メーカーのGE(ゼネラル・エレクトリック)、東芝、日立も責任は負わないのだ。これも驚きではないか。
 河合にすれば、摩詞不思議な法律としか表現のしようがない。このような内容の法律は、この原賠法以外、日本には存在しない。
 この法律をたとえれば、欠陥自動車で事故が起きたとしても、責任は運転者のみが負い、自動車メーカ!に過失はなく、すべて免責になるということだ。
 この原賠法は昭和三十六年(一九六一)六月に制定されたが、その背景には驚くべき理由が隠されていた。もし、万が一、事故が発生し、原子炉を製造したGEに製造物黄任が問われることになってしまったら、莫大な損害賠償が請求されてしまう。
 そこで、米政府は自国の原子炉メーカーを守るために、強く後押しをして日本に原賠法を制定させ、第三条と四条で原子力事業者の電力会社のみが無過失責任、無限責任を負うと規定させたのである。
 当時、日本は敗戦国であり、原発の技術を米国から与えられる立場にあったため、これほどの"不平等条約"を強いられたのだ。米国という国は、そういう国なのだ。米政府やGEは、福島第一原発の事故発生後に、どれだけ安堵したことだろう。
 日本政府も同様だ。国には責任を負う必要がないとされているため、国家賠償責任からも逃れることができた。東電の役員や原発に大きく関わってきた元役員らも、個人的に責任を問われることはない。唯一、東電という法人だけが責任を問われることになる。
 会社法第四二九条では、「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」と定められている。
 取締役個人に悪意、または重過失がある場合は、取締役個人は、被害者など第三者(会社の取引先など)に対して責任を負うことになる。しかし、原発事故の場合、被害者はこの条文による損害賠償請求ができない。前述の責任集中の原則のせいだ。
 会社法第四二三条には、「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」ともされている。
 本来、良識ある株式会社であれば、役員らを相手にした会社法第四二三条による損害賠償請求を起こしてもおかしくない。東電の場合であれば、勝俣恒久会長らを相手に、巨額の損害賠償請求訴訟を起こしてもいいはずだ。それだけの事故を起こしたのだから、当然である。
 ところが、東電は旧役員の責任を追及するどころか、庇うのに必死である。福島原発の被害者や国民は、彼らを不問に付すしかないのか。
 そこに登場したのが河合だった。河合は考えた。
336−337頁 第6章

「原発の安全性確保については、きわめて細心の注意が払われてきた。東電としては、法令や行政機関の策定した指針などで示された安全規制を遵守するのみならず、さらに白主的な調査・検討をおこなうとともに、必要に応じて対策も講じつつ原発事業をおこなってきた」
 そうしたうえで、被告に「原発の設置・運転に関する取締役としての注意義務違反はなかつた」と反論した。
 同時に、これも予想どおり、東電は被告の取締役を支援するため、訴訟への「補助参加」(民事訴訟で、訴訟の結果に利害関係を持つ第三者が、係属中の訴訟に当事者の一方を補助するために参加すること)を中し出てきたわけだ。
 河合にいわせれば、取締役らをさしおいて、「東京電力」という会社自体が出しゃばってきたのである。
 中出書には「今後も原子力発電が依然として一定の役割を担うことが想定されており、原発事業を営む東電としては、今後の円滑な電気事業の遂行を確保するために(補助参加が)必要だ」と記された。原発再稼働を前提としているのだ。
 これに対し、弁論の冒頭、株主側弁護団の団長・河合弘之が、補助参加に異議を中し立てた。
 理由の一つは、東電は原発事故の責任を認めて損害賠償に応じているのに、補助参加によって取締役を支援するのは、国や被害者に対する態度と矛盾すること。
 二つめは、補助参加にともなう多額の弁護士費用は、東電に投入された公的資金=国民の税金でまかなわれることになり、国民が納得しないこと。
 三つめに、現在の東電取締役会のメンバーは】人をのぞいて今回の訴訟の被告になっており、取締役会で自分たちを支援するための補助参加を決めるのは「利益相反」に当たること。
 この三つを挙げた。
 地裁が、東電の補助参加を認めるかどうかが、訴訟の最初の焦点になると河合は読んだのである。
 東電の弁護は、三五〇人もの弁護士を擁する日本最大級の総合法律事務所「長島・大野・常松法律事務所」が引き受下けている。
 タイムチャージが一時間五万円以上もするような弁護士たちを並べたことに、河合は腹が立っていた。
〈東電は、悪いことをやった役員らの弁護を、国民の税金でやるのか! 東電という会社は、破綻して国からの交付金がなければアウトの会社だ。そんな会社が悪い役員の弁護を、国民の税金を使ってするのか! とんでもない1〉
 軽く億は超えると思われる弁護土費用も、税金から支払われることになるのだ。
 この怒りは、いつになっても、おさまることはない。
326−327頁 第6章

業務上過失致死傷などの犯罪にあたるとして、東電幹部や学者、官僚らを福島地方検察庁に刑事告訴.告発した。
 告訴・告発されたのは、東電の勝俣恒久会長、清水正孝社長、原子力安全委員会の班目春樹委員長(いずれも事故当時)、山下俊一・福島県立医科大副学長や、原子力安全・保安院、文部科学省の幹部ら計三三人Q
 事故前に津波対策が必要と指摘されていたのに怠ったり、事故後に安全宣言をくり返して住民の避難を遅らせたりした過失が、業務上過失致死傷にあたるとした。
 刑事告訴の場合、死亡や傷害と原発事故の因果関係をどうとらえるか、ということが問題になる。
 河合は、福島第一原発に近いところにあった大熊町の双葉病院で、入院していた多数の高齢者が取り残されて避難が遅れ、逃げまどってたらい回しされて亡くなったのは、明らかに原発事故のためだと主張した。また、福島で子供の甲状腺がん患者も、すでに十数名出ている。
 第一次の告訴・告発は、八月一日に福島地検に受理された。その後も、規模は拡大している。
 最初の告訴・告発は、原発事故が起きたときに福島県内に住んでいた人に限定していたが、二回目は全国に対象範囲を広げた。いまでは、全国の約一万五〇〇〇人規模になっている。
 .平成二十五年春頃、検察が起訴するかどうかを三月中に決めるとの噂が流れ、メディアは「三月末に不起訴」と報道した。
 河合は、この報道に対して、記者会見の場で、記者らに文句を言った。
「あなたたち、何を根拠にこのような記事を出すんだ。いい加減なことばかり書いて……。だれかに頼まれたのか」
 東京地検の幹部に説明を求めたところ、「だれがそんなことを言うんですか」と怒っていた。
 そして三月末は何事もなく過ぎた。
 いまは、まだ、ろくに捜査ができていない段階なのだ。なにより、肝心な強制捜査がおこなわれておらず、それが問題である。
 中央白動草道の笹子トンネル崩落事故が起きた際、NEXCQ中日本に対し、事故後二日で強制捜査が入った。東京・港区の区営住宅で、シンドラー社のエレベーターによる死亡事故が起きた際にも、事故後四日で強制捜査が入っている。
 このように、大事件が起きれぼ、すぐに強制捜査がおこなわれるのが当たり前である。
 しかし、東電には強制捜査が人っていない。河合にすれば、奇妙奇天烈な話である。
 福島第一原発の事故が発生したばかりの頃であれば、収束作業の邪魔になるために捜査には入れないが、いまの東電本社、福歸第一.原発なら捜査は可能だ。
 それでも強制捜査をしないという状況に、河合は何か政治的意図があるのではと疑っている。
 東電の取締役会は形骸化している。立件するためには、津波や地震に関する社内のあらゆる会議の実施状況、中身、報告や資料の流れを精査し、取締役が検討内容を眼にすることができた可能性を調べ上げるしかない。
 そうでなければ、トップは事前の警告を「聞いていない」「おれは知らない」で逃げてしまう。
 徹底的な関係書類の押収・差し押さえが不可欠なのだ。
336−337頁 第6章

著者/訳者

大下英治/著

出版社名

さくら舎

発行年月

2013年10月

サイズ

342P 19cm

販売価格

1,600円 (税込1,728円)

内容紹介

巨悪たちの<奪うか奪われるか>の舞台裏! すべて実名で明かされる真相!
“法の凄腕用心棒"が見たカネと欲望の裏面史

河合弘之は数々の大型経済事件を逆転勝利に導いてきた弁護士である。
バブル華やかなりし頃「金屏風」で世を騒がせた平和相互銀行乗っ取り事件、バブル不動産・秀和による
忠実屋・いなげや株買い占め事件、企業乗っ取りを企む仕手集団光進事件などで、誰も考えつかない
戦術を編み出してきた。社長解任をめぐる株主総会での激しい応酬、謎の公認会計士との共闘など、
法律という知を武器に闘う熱い逆転劇は読み応え十分。そのほかイトマンや住友銀行、ダイエー中内功、
バブル不動産の慶屋、野村證券なども登場。河合は弁護人として常に依頼人の利益のため最善を尽してきた。
世間的には悪党と呼ばれる依頼人であっても、違法でない限り全力を尽すのだ。
そして現在は、脱原発弁護団全国連絡会を率いて、東電全役員を訴える賠償訴訟を展開中。河合は
原発賠償法で手厚く守られた東電を会社法の株主代表訴訟という誰も考えなかった奇策で法廷に引きずり
出した。請求額は史上空前の5兆5000億円である。

出版社からのコメント

やられたら10倍返しでやり返す逆襲弁護士! とにかく面白い! 窮地に追い込まれたところから、河合弁護士が繰り出す奇想天外なアイディアの数々。知の格闘技ともいうべき駆け引きが痛快です!

内容(「BOOK」データベースより)

巨悪たちの奪うか奪われるかの舞台裏!すべて実名で初めて明かされる真相!誰も考えつかない戦術を編み出し、数々のバブル大型経済事件を逆転勝利に導いた“法の凄腕用心棒”!

著者について

大下 英治(おおした・えいじ)
1944年、広島県に生まれる。広島大学文学部を卒業。週刊文春記者をへて、作家として政財官界から芸能、
犯罪まで幅広いジャンルで旺盛な創作活動をつづけている。著書には『十三人のユダ 三越・男たちの野望と崩壊』
(新潮文庫)、『実録 田中角栄と鉄の軍団』シリーズ(講談社+α文庫)、『昭和闇の支配者』シリーズ(だいわ文庫。
シリーズ合計40万部)、『トップ屋魂』(ベストセラーズ)、『昭和政権暗闘史』シリーズ(静山社文庫)、『脱原発』
(河合弘之との共著、青志社)、『官僚』(飯島勲との共著、青志社)、『田中角栄秘録』(イースト新書)などがある。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

大下/英治
1944年、広島県に生まれる。広島大学文学部を卒業。「週刊文春」記者をへて、作家として政財官界から芸能、犯罪まで幅広いジャンルで旺盛な創作活動をつづけている
目次

はじめに

目次


第一章 ヤメ検の野望を粉砕 〜 平和相互銀行事件

ヤメ検"カミソリ伊坂"が食らいついた平和相銀
会長を意のままに操る「平和相互のラスプーチン」
伊坂・平和相銀鴨創業家小宮山一族の争い
小宮由一族、住銀がらみのカネで銀行株を死守
一族取り潰し作戦に、借金一括返済という奇策で対抗
「はい、一二七億円。いま持ってきました」 39

2

「自爆作戦」に「焦土作戦」、あの手この手で伊坂を追い込む
平和相銀乗っ取りの陰謀「金屏風事件」 54
大蔵省と住銀のタッグに墳められたのか 57
竹下元首相が証人喚問された「金屏風」の闇 60
陰謀合併劇の命運を分けた一手 66


第二章 失敗と成功のきわどい綱渡り 〜 ダグラス・グラマン事件、リッカー再建、つぼ八事件

1

敗戦の混乱期を生き延びた一家
労働弁護士からビジネス弁護士へ

2

児玉誉士夫に利用された疑惑の「海部メモ」 83
暗殺を恐れて雲隠れした有森 86
国会証人喚問の厳しい追及をかわすテクニック
八人の追及をクリアさせた完壁な証言アドバイス

3

和議で正面突破をはかったリッカー倒産劇
無理押しきかず、わずか一ヵ月で再建断念
「つぼ八」乗っ取りをたくらんだイトマン
創業者・石井を放逐したあとの苦い思い


第三章知力と胆力の死闘  秀和vs忠実屋・いなげや事件

1

「刑事事件を起こすと死ぬんだよ」と嘯くバブル経営者 ライフ社長解任劇の絵図を練る 
流通再編をもくろんだ秀和の株買い占め 
忠実屋・いなげやを援護する野村證券と森綜合法律事務所 ビジネスの喧嘩の要諦は「敵の最弱点に一発ぶち込む」 裁定日、勝利はどちらの手に…… 
証券市場のルールを変えた"逆襲"弁護 

2

ダイエー・中内が糸を引いていた買収劇舞台裏 バブル崩壊前に撤退した脂友社長の「裏切り」 九九勝しつづけ、一敗ですべてを失った男 
兵どもが夢の跡 


第四章金の亡者たちの本性  イトマン事件、福岡ドーム事件

1

バブル不動産屋・慶屋とイトマンが急接近 聯
二億で買った倒産会社を利用した狡猾な手口廨
「河合先生、慶屋から十地か金を取り上下げてくれないか」 耶イトマン流「究極の高利貸し一のカラクリ 78
"闇の紳士"伊藤寿永光の参入 幽

2

バブル崩壊を予見し二五億の不動産を売り抜く人生の転機となった禍福 桝
「弁護士の腕次第で事件の結果は変わる」 o

3

福岡ドーム贈収賄疑惑、中内の泱断 蛎明かされた意外な「真相」 o
中内の相続税対策"ダイエー方式"を考案


第五章華麗なる大乱闘劇  光進の国際航業事件・蛇の目ミシン事件

1

国際航業を狙う仕手筋集団「光進」 
元運輸相を使って覚え書きを"抜き打ち"調印 
「覚え書きは、取締役会の承認がないので、無効です」 
小谷の助っ人についた事件屋と敏腕弁護士 
会長を籠絡し、まんまと過半数株を獲得 
想定外の先制攻撃「株主権行使禁止の仮処分」 
仮処分を無効にする奇想天外なアイディア 
「弁護とは『正義』ではなく『論理』だ。違法でない限りベストを尽くす」

2

小谷側弁護士鴨社長側弁護士、白熱の駆け引き流血の株主総会は小谷側の完敗 
臨時株主総会をめぐる両陣営の策略合戦 信託銀行の妨害工作をはねのける 
日本初の敵対的M&A、ついに成功す 

3

小谷が奪った四〇億を取り戻す
国際航業買収の裏で進む蛇の目ミシン事件


第六章巨悪と闘う知略  東電株主代表訴訟

1

「日本の原発を全部止めて、国を破滅から救いたい」 「脱原発弁護団全国連絡会」を組織し、弁護士を結集 東電役員の民事責任を奇策で追及、「逃げ切りは許さない」
史上最高の賠償請求額「五兆五〇四五億円」のカラクリ「訴訟には『そうはいかない』と思い知らせる効果がある」

2

億を超える税金を自分たちの弁護費用に使う東電「東電テレビ会議」記録映像の保全を申し立て 刑事告訴で東電役員や官僚の黄任を追及 
勝つまでやる「権力との鬪い」 




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