きょうこの頃



2013年12月14日(土)

 開沼博『漂白される社会』読了。

序章

 周縁的存在

 無縁社会

 網野善彦 『無縁・公界・楽』

 無縁と自由

第1部
 第1章 「売春島」の花火の先にある未来

 渡鹿野島(わたかのじま)は、三重県志摩市(旧志摩郡磯部町域)にある島。伊勢志摩国立公園内にある。

 第2章 「現代」の貧困に漂うホームレスギャル

 マクドナルドで寝る少女二人組
 自称「移動キャバクラ」

 中村淳彦「デフレ化するセックス」2012年 宝島社

 社会学者・中野卓『口述の生活史』 御茶の水書房 1977 オーラルヒストリー ライフヒストリー
 
 中野加奈子『生活史研究の系譜』 http://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/DF/0039/DF00390L017.pdf


 ブログ参照。

 「近代」以前に「子供」は存在しなかった(らしい)。

未成年少女という「絶対的な聖域」

 それでは、繁華街浄化作戦を経て、彼らが学習した「問題起こさず商売する方法」とはいかなるものなのか。大きくは二つある。
 一つは「ミテコ(身分証を提示できない一八歳未満の女性ととは関わらないということだ。
一(繁華街浄化作戦の)前は、ミテコも入れてました。もちろん、未成年を水商売・風俗で働かせちゃダメなんて大昔から決まっていることだけど、別人の住民票持たせて店に入れたり、身分証の要求すらされないこともあった。スカウトしてるこっちだって、『一九歳です』『二〇歳です』って化粧した中学生が来ても、『だいぶ小柄だな』とか「童顔だな』とは思うかもしれないですけど、それ以上追及しようないですからね。
 でも、今はもうやめたほうがいい。青少年保護の条例やらが適用されるようになって、違反すると柑当厳しい話になる。この仕事でトラブった時って、ただの風俗トラブルや売買春のトラブルなら担当は刑事課だけで、よほどでなければ警察も動かない。前はその範疇だった。でも、今は話が違う。未成年が絡んでるとなると、生活安金課系の少年担当、保安担当も束になって動いてきて相当ややこしいし、挙げられた(逮捕された)日には罰も重い」

「"子ども"が誕生したのは近代になってからのこと」。そう指摘したのは、フランスの歴史学者フィリップ・アリエスだった。
 近代以前、社会に「子ども」は存在しなかった。七・八歳となる以前は動物と同様の扱いをされ、それ以後は、徒弟制度のもとで「小さな大人」としての生活を始める。それが、近代以前の「子ども」とされる人間に対する扱い方だった。
 しかし、近代を迎え、学校が誕生し、健全に育成するための「特別な配慮と隔離」がなされるようになる。つまり、それ以前は、「小さな大人」に対して「特別な配慮と隔離」はなされず、大人と同様の扱いを受けていた。
 その扱いは、「性」についても顕著に現れていた。「性的なものへの言及が子供の無垢を穢し得かねないという感覚が、実際の面でも世論の中にもまだ存在していなかった」(フィリップ・アリエス「〈子供〉の誕生』、みすず書房、一〇二頁、一九八○年)時代のほうが、人類の歴史においては長かった。近代的な学校・教育・家庭が成立するなかで初めて、子どもが性に触れることに対して「特別な配慮」がなされ、性から「隔離」されるようになったのだった。
(156-157頁)


漂白される社会

著者/訳者

開沼博/著

出版社名

ダイヤモンド社

発行年月

2013年03月

サイズ

462P 20cm

販売価格

1,890円

本の内容

売春島、偽装結婚、ホームレスギャル、シェアハウスと貧困ビジネス…。「自由」で「平和」な現代日本の闇に隠された真実 先入観と偏見で見過ごされた矛盾と現実を描く。

ISBN

978-4-478-02174-3

著者情報

開沼 博
社会学者、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。1984年、福島県いわき市生ま れ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にル ポルタージュ・評論・書評などを執筆。読売新聞読書委員(2013年〜)。第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別 賞 

目次

はじめに
序章
「周縁的な存在」の中に見える現代社会
闇の中の社会 l
現代社会とはいかなる社会なのか 3
「下世話」な存在の先に眠る契機 5
「周縁的な存在」と「無縁」 8
網野善彦に描かれた、かつての[無縁」 11
形を変えて生き残る現代の〈無縁〉 14
「無縁}の原理を貫く「周縁的な存在」 17
現代社会の「旅」の中へ 20

第一部 空間を超えて存在する「あってはならぬもの」たち

第一章 「売春島」の花火の先にある未来

明治以前から売春を生業とする島 26
国家成長を支える公然のタブー 28
存亡の危機を迎える「売春島」 31
摘発と情報化で加速する島の衰退 34
「裏」の顔を捨てられない島の現実 37
原発誘致を巡る島民の葛藤、その選択 39
かつての遊女は最期の訪れを待つ 41
陰影にまぎれ去る小さき者たち 43

第二章 「現代の貧困」に漂うホームレスギャル

マクドナルドで眠る二人のホームレスギャル 45
池袋の少女たち 48
「移動キャバクラ」の実能ゆ 50
売春論が迎えている変化の特徴 54
小学生から薬物に明け暮れたリナ 56
キャバクラ、そしてホストクラブへの入店 59
「性」と「カネ」で満たされたマイカの人生 61
日々の顧客情報はノートで管理 64
わかりやすさが見落とした「現代の貧困」 69
夜の世界に頼れない二つの理由 70
わずかなつながりを頼りに今を生き続ける 72
「あってはならぬもの」が明らかにする社会の真実 75
二人のホームレスギャルが映し出す「現代社会のあり様」 78

第二部 戦後社会が作り上げた幻想の正体

第二章 「新しい共同体」シェアハウスに巣食う商才たち

住民の死に薩面したシェアハウス経営者 88
佐藤がシエアハウスの入居を懇願した理由 91
遺体の引き取りを拒否した遺族 93
「夜逃げ後処理屋」が営む巧妙なビジネス 96
遺品整理業の現場 98
二度目の「漂白」を迎えた佐藤の死 100
メディアが描くシェァハウス像への強い疑問 102
ほどよい"群れ具合"が物件運営のカギ 106
ネズミ講に求める一擾千金の夢 108
「オフ会ビジネス」に吸い取られるシエアハウスの住民たち 112
時代が生んだ「新しい共同体」に商才は群がる 114

第四章
ヤミ金が救済する「グレー」な生活保護受給者
生活保護受給者となった元会社経営者 118
バブル崩壊で始まった破滅へのカウントダウン 120
ヤミ金にハマった松下に、ヤミ金が手を差し伸べる 122
[生活保護受給マニュアル」による過酷一な演技指導 125
申請前から申請後まで、完備された受給情報 130
業者が斡旋するマンション、その一一つの特徴 134
『純粋な弱者レへの期待が見落とした本質 137
ヤミ金がもたらす「インフォーマルなセーフティネット」 140
「純粋な弱者」のみが許容される現代社会 142
「マイホーム」「幸せな家族」という幻想 144

第三部 性・ギャンブル・ドラッグに映る「周縁的な存在」

第五章 未成年少女を現金化するスカウトマン

女のコの名前を"ポケモン"で管理するスカウトマン 151
キレイな街で見落とされる現代の「女街」 153
未成年少女という「絶対的な聖域」 156
管理強化が可視化する売春ビジネス 160
巧妙に進化する"いかがわしさ"の代替機能 旧
敏腕スカウトマンが語る「ビジネスモデル」の実態 166情報化が生み出した新事業「援デリ」 169
細分化された欲望が生み出す市場のすき間 172
デリヘルのシステムを「援デリ」に応用 173
「援デリ」に訪れる環境の変化 175
「絶対的な聖域」があるための不可視性と希少性 177

第六章 違法ギャンブルに映る運命の虚構

雑居ビルを彩る会員制の闇バカラ 181
現代の「貴族」が没頭するバカラの魅力 183
「持つ者はさらに持つ」象徴 185
「逸脱した存在」が生み出す新たな価値 187
闇スロットの「小さな逸脱」が人を魅了する 189
カネを巻き上げる手法は洗練され続ける 191
"馴染みやすさ"で浸透する野球賭博 193
熱中させる「ハンデ」の仕組み 195
胴元が備える絶対的な資金力 198
重層的な人脈が可能にする摘発逃れ
社会の隅々に浸透する「ギャンブル的な存在」 

第七章 「純白の正義」に不可視化される脱法ドラッグの恐怖

「ドラッグ専門家」に手渡された「脱法ハーブ」 
ドラッグ吸引が引き起こした壮絶な体験 
「違法」の網から逃れた、「合法」の余地が拡大 
薬物へのレッテルが和らげる恐怖感 
「合法」薬物だから安心という「思い込み」 
「ドラッグ初心者」にもたらされた変化 
「脱法ドラッグ」一〇年の歴史 
「純白の正義」で引かれた補助線の先にあるもの 
売人が語る「脱法ハーブ」ビジネスの実態 
社会問題ともされないアディクションのループ 
第四部
現代社会に消えゆく「暴力の残余」

第八章 右翼の彼が、手榴弾を投げたワケ

マンションの一室に集められた「プロジェクトメンバー」 236
右翼団体代表がWEBサイトの運営を始めた理由 238
「仁義」「任侠」「絆」、そして「良心」への期待 240
似非同和で成り立つ「怪しい」ビジネス 243
力と知恵を併せ持つ者だけが生き残れる時代 245
右翼団体代表として迎えた絶頂期 247
"シャバ"は小野を受け入れる「余裕」を失う 250
右翼になるまでの人生 252
時代の変化で可視化された虚像の実態 255
「勢い」を見せつけた先にあるもの 257

第九章 新左翼・「過激派」の意外な姿

デモの中の「普通の市民」ではない者たち 260                    2
街中に仔む「過激派」のアジト 
組織が高齢化する当然の理由 
縮小を迎える一学生運動」と「労働運動」 
「社会を変えたい」と活動に参加した高井 
「クリーンなNPO」の実態に戸惑う女子大生 
若者はなぜ、「過激派」に参加したのか 
今も続く「三里塚闘争」の現場 
「三里塚闘争」が残した二つの爪痕 
見落とされる「正義」の重層性 
六〇歳の活動家が語る闘争の現在 

第五部 「グローバル化」のなかにある「現代日本の際」

第十章 「偽装結婚」で加速する日本のグローバル化

フィリピンを訪れた「新郎」 
戸籍を汚して得る「報酬」の決まり方 
厳格化するタレントビザの摘発 
一偽装結婚qの摘発が進まない理由 
「新郎」が語る摘発の実態 305
グローバル化は今に始まったことではない 307
二つの貧困で変わる「家族」と「結婚」 308

第十一章 「高校サッカー・ブラジル人留学生しの一〇年後

簡易ベッドで眠るブラジル人 312
サッカー留学生がたどる複雑な生い立ち 313一五歳で急遽来日、両親との再会 317
孤独な寮生活で溜め込むストレス 320
高校を中退、アルコールに依存する生活 322一○代後半から水商売を転々と 324
周囲を魅了し、裏切り、逃げ続ける 326
再起を賭けてふたたびサッカーの道へ 328法改正で急増した浜松のブラジル人 329
決して逃れられない「負の呪縛」 331
故郷ブラジルで見続ける日本での夢 334

第十二章 「中国エステのママ」の来し方、行く末

「豊かで幸せな生活」を求めて来日したチェ・ホア 337
働かない父親、貧しい環境で育った幼少時代 339
大学時代に募る日本文化への憧れ 342
転職先のアパレル企業で社長の愛人となり貯蓄 345
念願の来日を果たし、日本語学校に入校 348
「富士そば」ですすったタヌキそばの思い出 350
「中国エステ」との出合い 353
仕事で学んだ日本人サラリーマンの本音 355
「中国エステ」の実態 357
「中国エステ」は誰が始めたのか 361
「オニイサン、マッサージいかがですかー?」 363
摘発の厳格化で進む「オシャレ化」 365
就職と事業に失敗し、「中国エステのママ」に 367
五〇万円で店を売却した理由 370
従業員の性的サービスが招いたトラブル 371
健全店として生き残るために磨かれる技術 373
できちゃった結婚と離婚、さらに「偽装結婚」へ 376
規制強化に翻弄されながらも経営は順調 378
「豊かで幸せな生活」を求めて「カネの奴隷」に 380

終章 漂白される社会

変化する日本社会が向かう先 384
「周縁的な存在」と「あってはならぬもの」の正体 385
一二の旅で見えてきたもの 390
「安全や信頼」の再構築が放棄される 393
もはや「客観的な安全」などない 396
現代社会への問い、その答えの一つ 398
漂白される社会 400
おわりに 404

主要参考文献 459
索引 762





content2013