▼『週刊文春』発売禁止処分が投げかける言論の危機を問う。 『噂の眞相』休刊号にあたる04年4月号が発売されてちょうど1週間後の3月17日、『週刊文春』の発売禁止仮処分命令が東京地裁によって出された。この仮処分が出された時点では、すでに『週刊文春』は取次会社への搬入を終えており、結果的には出荷前だった3万部のみが販売中止の対象となった。仮処分の根拠とされたのは、田中真紀子氏の長女がわずか1年で離婚していたという記事がプライバシー侵害にあたるというものだ。 これまでにも発売禁止仮処分の申し立てを裁判所が認めたケースがなかった訳ではないが、大手出版社が発行する週刊誌に対して命令が出されたのは最初のケースだった。政治家の長女の離婚はプライバシーであり報道してはいけないという裁判官の判断には大いに問題があるが、それはひとまずおくとしても、この仮処分がメディア界、特に雑誌ジャーナリズムに与えた衝撃は大きかった。憲法で保障された表現・出版の自由よりも事前検閲を優先する裁判官が遂に登場したということで、メディア規制の流れが総仕上げに入ったといった感があった。 こんな形での事前検閲が簡単に認められるようになれば、先に法令化された個人情報保護法や名誉殿損裁判における損害賠償高額化とあわせて考えても言論メディアにとっての明らかな暗黒時代への突入である。タイミングよくこうしたメディア規制に抗議するかのように休刊に踏み切った『噂の眞相』に対しても取材やコメント依頼が相次いだ。雑誌としては前代未聞ともいえる黒字休刊の理由に関して取材ラッシュがそろそろ終わりに近づいていたところに、この言論危機の時代を象徴する事件の勃発である。『噂の眞相』の休刊とも関係するような言論危機の発生により、筆者も再び取材攻勢の渦中へと巻き込まれる事態となった。前述した「週刊誌記者匿名座談会」の存在によって、『週刊文春』にいくらシカトされても、ここは立場を
集英社新書 0275
著者/訳者
岡留安則/著
出版社名
集英社
発行年月
2005年01月
サイズ
252P 18cm
販売価格
735円
本の内容
オカドメ・スキャンダリズムのこれでウチドメ。’79年に始まった「噂の眞相」のスキャンダリズムは、’04年の休刊をもって終わった。25年にわたってその陣頭指揮をとった名物編集長・岡留安則による満身創痍の内実を語った時代の風雲録である。
目次
第1章 『噂の真相』揺籃篇第2章 タブーに向けての躍進篇第3章 休刊宣言騒動裏事情篇第4章 スキャンダリズム講義篇第5章 『噂の真相』イズム闘争篇第6章 「我カク戦ヘリ」歴史・戦歴篇
ISBN
978-4-08-720275-5
著者情報
岡留 安則(オカドメ ヤスノリ)1947年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊。その後、79年『噂の真相』を編集発行人として立ち上げ、二五年間、一貫してスキャンダリズム雑誌として、独自の地歩を築く。数々のスクープを世間に問うが、04年3月をもって黒字休刊となる