子供の酒 私の息子が酒せ飲むようになっ.たのは、、高校の二年か三年のときだった。 私はそのことをいいとも悪いとも言わず、晩酌のときに、どうだい、一杯飲むかいときいたりした。だから、むしろ、けしかけるほうの側にあったということになる。 息子は大学の四年生になり、二十一歳になった。二十歳を過ぎてからは、おおっぴらに飲むようになった。 高校生のときは、もちろん、学校の規則としては禁酒・禁煙である。私は、煙草を吸ったから停学、喫茶店へ入ったから認責というようなやりかたには反対していた。教育者と.して子供を叱るのは、もっと別のことだろうと考えている。 学校の教師は、交通取締りの警察宮ではないのだ。点数をあげホシをあげるのを職業とする人ではないのだ。 前首椙の佐藤栄作さんは、中学生のときに煙草を吸い酒も飲んでいたという。その.前の首相の池田勇人さんは広島の造り酒屋の伜だから、佐藤さんよりも早かったろう。それでいいのだと思う。
新潮文庫
著者/訳者
山口瞳/著
出版社名
新潮社
発行年月
1979年03月
サイズ
363P 16cm
販売価格
448円
本の内容
世界の美酒・銘酒を友として三十余年、著者は常に酒と 共にあった。なぜか。「酒をやめたら…もうひとつの健康を損ってしまうのだと思わないわけにはいかない」からである。酒場で起こった出来事、出会った人々 を想い起こし、世態風俗の中に垣間見える、やむにやまれぬ人生の真実を優しく解き明かす。全113篇に、卓抜して飄逸な山藤章二さんのイラストが付く。
目次
はじめての酒甲府の葡萄酒飯盒の酒暗がりの酒空襲の翌朝お流れ頂戴お燗番酒亭たにし最後の高見順さん天に昇る電車〔ほか〕
ISBN
978-4-480-42768-7
新聞、雑誌掲載
読売新聞 2010年10月17日掲載
著者情報
山口 瞳1926‐95年。東京生まれ。麻布中学から第一早稲田高等学院に入学するが自然退学。戦後、働きな がら國學院大學を卒業する。1958年、サントリーに入社し、「洋酒天国」の編集者として活躍する。63年『江分利満氏の優雅な生活』で直木賞、79年 『血族』で菊池寛賞を受賞する