きょうこの頃



2012年9月16日(日)

 山口瞳『酒呑みの自己弁護』読了。
 
 ブログ

 45歳のくせに老成ぶって偉そうなのである。

 索引がすごい。
 だいたい、こんなエッセイ集にパソコンもないあの時代にこんな面倒な索引を作成するというところが強迫的である。

 大変だっただろうなァ。


職人肌の男には鬱屈するところがあり、酒に酔って爆発する。
(282頁)

 子供の酒

 私の息子が酒せ飲むようになっ.たのは、、高校の二年か三年のときだった。
 私はそのことをいいとも悪いとも言わず、晩酌のときに、どうだい、一杯飲むかいときいたりした。だから、むしろ、けしかけるほうの側にあったということになる。
 息子は大学の四年生になり、二十一歳になった。二十歳を過ぎてからは、おおっぴらに飲むようになった。
 高校生のときは、もちろん、学校の規則としては禁酒・禁煙である。私は、煙草を吸ったから停学、喫茶店へ入ったから認責というようなやりかたには反対していた。教育者と.して子供を叱るのは、もっと別のことだろうと考えている。
 学校の教師は、交通取締りの警察宮ではないのだ。点数をあげホシをあげるのを職業とする人ではないのだ。
 前首椙の佐藤栄作さんは、中学生のときに煙草を吸い酒も飲んでいたという。その.前の首相の池田勇人さんは広島の造り酒屋の伜だから、佐藤さんよりも早かったろう。それでいいのだと思う。

(293頁)
この子は、1950年生まれ。山口正之という映画評論家。

 この本は、昭和四十八年三月に新潮社から発行され、第一回の「日本腰巻文学大賞」を受賞した。その「腰巻」が傑作である。
 文庫に収録されるにあたって.は、たぶん、.この.「腰巻」は外されて.しまうと思うので、まずは、この「腰巻」から紹介したい。作者億山口さん自身ではなく、池田雅延ざんという新潮社の編集者であるが、審査員の一人だった吉行淳之介さんも「中身を十分たのしんだあとで、グリコのオマケのように、この腰巻をしみじみ眺めてみると格別味がある」(傍点=解説者)
 と言っておられるので、山口さんにたいしても、けっして失礼にはなるまい。
 それは、まあ、こういうものだ。

月曜 一日会社へ行って
火曜日 夜更けに九連宝燈
水曜 一晩小説書いて
木曜 三時の四間飛車
金曜 日暮れに庭木をいじり
土曜日 たそがれ馬券の吹雪
日曜 朝から愛妻家

月々火水木金々
酒を呑みます
サケなくて
何で己れが 桜かな

 くやしいけれど、この本について、この帯の文句に勝る解説はない。.この「腰巻」をっくった池田さんもまた、アルコール中毒ならぬヒトミ中毒の、それも、かなりな重症患者ではなかろうか?
(354-355頁)

酒呑みの自己弁護

新潮文庫

著者/訳者

山口瞳/著

出版社名

新潮社

発行年月

1979年03月

サイズ

363P 16cm

販売価格

448円

本の内容

世界の美酒・銘酒を友として三十余年、著者は常に酒と 共にあった。なぜか。「酒をやめたら…もうひとつの健康を損ってしまうのだと思わないわけにはいかない」からである。酒場で起こった出来事、出会った人々 を想い起こし、世態風俗の中に垣間見える、やむにやまれぬ人生の真実を優しく解き明かす。全113篇に、卓抜して飄逸な山藤章二さんのイラストが付く。

目次

はじめての酒
甲府の葡萄酒
飯盒の酒
暗がりの酒
空襲の翌朝
お流れ頂戴
お燗番
酒亭たにし
最後の高見順さん
天に昇る電車〔ほか〕

ISBN

978-4-480-42768-7

新聞、雑誌掲載

 読売新聞 2010年10月17日掲載

著者情報

山口 瞳
1926‐95年。東京生まれ。麻布中学から第一早稲田高等学院に入学するが自然退学。戦後、働きな がら國學院大學を卒業する。1958年、サントリーに入社し、「洋酒天国」の編集者として活躍する。63年『江分利満氏の優雅な生活』で直木賞、79年 『血族』で菊池寛賞を受賞する





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