きょうこの頃



2012年8月29日(水)

 神田橋條治『改訂 精神科養生のコツ』読了。
 何年か前に買った本だが、読み出してすぐに放り出していた。
 基本的には患者に向けて書いたものである。
 気功が出てきたり、Oリングが出てきたり、ホメオパシーが出てきたり、ちょっと怪しいところもある。


生活習慣の逆をするのが養生のコツなのだと考えるようにしましょう。逆をするというやり方は、病気の予防としての健康法に応用するととくによいのです。
(67頁)

 人生では愛することが不可欠です。不可欠なのは、愛されることではありません、愛することなのです。そして、愛する相手は、人でなくてもいいのです。生き物でなくてもいいのです。星空を愛して人生を送っても、充実した人生になるのです。神仏を愛しそれを支えに確かな生涯を送った人々は、歴史上にたくさん知られています。わたくしたちは何かを愛しているときに、自分の人生を生きているのです。
 そして、夢をもちましょう。どんなときにも、夢は必要なのです。夢が人を力づけるのです。
ですから、夢は死んでゆくときにさえも必要なのです。「もういちど生まれてくるときには、○○のように生まれて、○○のような生き方をしたい」「天国でお母さんを待っているからね」と言って死んでゆく白血病の子などはその例です。
 なかなか夢を思いつかない人は、次のようにしてみましょう。もし、神様が現れて、なんでも三つだけ願いを聞きとどけてあげようとおつしゃったら、わたしはどんな三つのお願いをするかなと考えてみましょう。そうすると、自分のうちにある夢が分かるものです。「幽霊になってみる」
だって、夢の一種です。 

(77頁)

8 うつ伏せ寝

 洋の東西を問わず、赤ん坊から老人まで、仰向けに寝るのが習慣です。ところが最近、寝たきりの人をうつ伏せ寝させるととてもよいという説が出ました。
 まず、床ずれが防げます。床ずれは皮膚のすぐ上に骨があるような場所で、骨と布団との間に皮膚が挟まれて生じます、仰向けに寝ると、そうした場所がたくさんあります。しかもそれらの場所は、体の中心に近いので、体力の弱った病人では動かしにくい部分です。うつ伏せ寝にしますと、体の中心に近い部分は胸や腹など肉厚の場所ですし、皮膚のすぐ下に骨があるような場所は中心から遠くて動かしやすい部分です。
 また、気管は体の前面に近い位置にありますので、仰向けに寝ると背中側に溜まった痰が気管にまで送られにくいのです。うつ伏せ寝にしますと、背中側に溜まった痰が重力で流れ出て咳で排出されやすいのです。老人は肺炎で死ぬことが多いので、このことは重要です。
 そのほかにもいろいろと良い点があります。@一回の呼吸量が増大する、A舌根の沈下が防げるので気道が広くなる、B便の出がよくなる、C古い尿が膀胱の出口のところに溜まって真っ先に排出されるので膀胱炎になりにくい、D下肢の固縮が防げる、などであり、寝たきりだった人が歩けるまでに回復することもあるそうです。
 若いうちにうつ伏せ寝の練習をして馴れておくと、老人になってからが楽だろうと思います。また、若い人で、骨格の歪みをもっている人には快適な寝方です。試してみて「気持ちがいい」なら採用してください。

(116-117頁)


精神科養生のコツ

改訂 

著者/訳者

神田橋条治/著

出版社名

岩崎学術出版社 (プロの薦める心理学書)

発行年月

2009年05月

サイズ

228P 20cm

販売価格

2,415円

内容紹介

出版から10年を経て,臨床現場でのやりとりのなかで,「養生のコツ」の基底にあるのは,「原始生命体の機能を呼び戻しましょう」との呼びかけであるとの 気づきを得た著者が,コツの数々をあらたに加え大幅改訂。汎用性のある助言と自己流が生まれるようにとの工夫とが織り成す,稀有な実践の書。

著者について

神田橋 條治(かんだばし じょうじ)
1961年 九州大学医学部卒業
1962~84年 九州大学医学部精神神経科,精神分析療法専攻
現 在 鹿児島市 伊敷病院




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